【論文紹介】ヒアルロン酸の血管合併症に関するガイドライン

美容

近年美容施術の低価格化に伴い、レーザーをはじめとした非侵襲的な施術だけでなく、注入などのリスクを伴う施術についても身近なものとなりつつあります。

しかしながら、そういった侵襲を伴う施術のリスクについては十分認知されていないと感じます。特にヒアルロン酸の注入では人体に不可逆的な変化をもたらすことがあるため、リスクについてきちんと知っておく必要があります。

ヒアルロン酸注入のリスクとしては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 腫れ・浮腫み
  2. 痛み・違和感
  3. 内出血
  4. チンダル現象
  5. しこり・肉芽腫
  6. アレルギー反応
  7. 感染症
  8. 血管閉塞

このうち最も重要なのが血管閉塞です。具体的には、皮膚壊死、失明、脳梗塞などが起こる可能性があります。そういった重篤な合併症を防ぐには、どのようなことに気をつける必要があるでしょうか。

ヒアルロン酸注入の血管合併症に関するガイドライン

J Clin Aesthet Dermatol 2021 May;14(5):E61-E69.
PMID: 34188752

近年注入による合併症が増えていることを受け、リスクを低減するためのガイドラインが作成されました。血管合併症のリスクを低減するために、以下のようなポイントがまとめられています。

解剖学的知識
主要血管の深さ、分布、一般的なヴァリエーションを理解すること。
手術を受けたことのある人に注入する場合は、解剖学的構造が変化している可能性がある。

・テクニック
低圧でゆっくりと注入する。
25G以上のカニューレの使用を考慮する。
閉塞の可能性を小さくするために、部位ごとに少しずつ注入する。
吸引する場合、正しく行っても信頼性に欠けることを理解する。
圧力計を使用することを考慮する。
アドレナリンは血管閉塞によって生じる白斑をマスクする可能性があるため使用しない。

・観察
組織に色の変化がないか注意深く観察し、注入時の痛みや視覚障害などの感覚の変化に注意する。

注入系の手技を習得する際は、解剖学的知識が必須になります。一般的な血管の走行は勉強するのですが、血管の走行には個人差があり、手術歴があるとなおさら解剖学的構造に違いが出る可能性があります。

注入の高リスク部位については、特に、眉間、鼻、額のリスクが高いことが知られています。その次にこめかみ、鼻唇溝、涙袋、眼窩周囲、頬の内側が続きます。

次に注入手技ですが、一般的に吸引テストやカニューレの使用などが行われています。吸引テストに関しては、吸引が陰性であっても安全であるとは断言できず、ゆっくり注入することも大事なポイントとなります。

SNSで「カニューレを使うから安心!」と発信しておられる方がおられますが、それは間違いです。血管合併症は、針でもカニューレでも起こります。症例報告のほとんどで手技が明記されていないため具体的な比率はわかりませんが、重大な合併症はカニューレの方が起こりやすいという意見も多いです。実際カニューレで血管閉塞が起きた例を、身近でいくつか知っています。

27Gのカニューレは、針と同じ力で動脈を貫通すると言われており、25G以上のものを使用するよう勧められています。(Aesthet Surg J. 2019;39(6):662–674. )

他には、注入後の皮膚色を観察すること、患者とコミュニケーションを取り疼痛の程度を把握することが必要であると記載されています。血管閉塞はすぐに明らかになることもあれば、治療後数時間から数日たってから明らかになる場合もあります。

このガイドラインでは、血管閉塞が起こった時の治療を次のように記載しています。

  • 患部を明るいところでビデオ撮影し、毛細血管再充填時間を患部動脈までの軌跡に沿って確認する。
  • 皮膚を消毒し、虚血部位全体に印をつける。
  • 1,500単位のヒアルロニダーゼを1mlの生理食塩水または1-2%のリドカインで希釈。
  • 針またはカニューレを用いて1,500単位を罹患動脈および虚血部の広い範囲に注入する。患部が広い場合は、一度に複数のバイアルを使用する用意をしておく。使用単位数にはあまりこだわらず効果が出るまで治療する。
  • ヒアルロン酸の機械的分解を助けるため、熱を加え、患部を激しくマッサージする。
  • 毛細血管再充填時間を再評価し、ヒアルロニダーゼ投与前のビデオと比較する。3秒以上遅れている場合は治療を繰り返す。

このように治療法が記載されているものの、治療により必ず回復するとは限りません。特に失明などの眼合併症では、直後から症状が現れ、ほとんどの例で視力が回復しないようです。(Dermatol Surg 2015 Oct;41(10):1097-117.)

なによりも予防が大切であるということは言うまでもありません。
ヒアルロン酸で治療する場合は、技術に精通し、リスクについてしっかり説明してくれる医師を選びましょう。

まとめ
ヒアルロン酸注入により皮膚壊死、失明、脳梗塞など重大な合併症が起こる可能性がある。
カニューレの使用や吸引テストはリスクを低減させるが、完全ではない。